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漫画版 遊戯王は打ち切りになる可能性があった?

遊戯王 打ち切りの危機

少年ジャンプにおける打ち切りの恐怖 「ジャンプシステム」について

前回の記事では、遊戯王がカードゲームで大ブームを巻き起こすまでの流れをご紹介しましたが実は遊戯王は、人気を獲得する前に打ち切りの危機に陥っていた可能性があった事について今回検証していきたいと思います。

遊戯王の掲載されている、週刊少年ジャンプには完全実力至上主義で掲載作品が決まるという独自の文化が存在しています。それは読者人気の無い作品は容赦なく打ち切りを宣告されるという冷酷無比なシステムです。ベテラン作家とて、これに例外はなく、読者人気がとれなければベテランも新人と同じように打ち切られるというある意味では平等なシステムだとも思います。

出典: 集英社 週刊少年ジャンプ 目次あとがき

作品の人気は読者アンケートによって毎週集計され、その票数によって次号の作品の掲載順が前後します。人気が高い作品は雑誌の前の方に掲載され、低い作品は後ろの方に掲載されます。これにより目次を見ると現在の作品の人気がランキング化され、作品がどのような立ち位置にいるかが一目瞭然となります。

打ち切りになる条件

そして、打ち切りになる作品には共通する項目があります。 それは20作品程ある作品の中で15位前後の順位を何周かにわたり取り続けることです。掲載順が後ろのほうがずっと続くようだとその作品はもうすぐ終了するのだろうと推察できてしまうのがジャンプシステムの恐ろしいところです。それでは遊戯王の連載開始1話~12話までの掲載順位をチェックしてみましょう。

第一章 学園編
01話01位 神のパズル
02話06位 偽りの目
03話09位 ハードビート!!
04話09位 脱獄囚
05話10位 妙な予言者
06話05位 熱い死闘
07話06位 真実の顔
08話03位 毒の男
09話08位 牙を持つカード 前編
10話02位 牙を持つカード 後編
11話09位 キレた奴ら 前編
12話06位 キレた奴ら 後編

いかがでしょうか?連載開始からほぼ一桁をキープし続けており順調なスタートといえるでしょう。この頃は第一章、学園編の物語であり、短くまとまった起承転結のしっかりしたお話が中心でした。

第21話 エジプトから来た男

出典: 原作/高橋和希 集英社「遊戯王」

そして第13話~20話、「エジプトから来た男」から始まるシャーディー編はミステリーやオカルト要素を盛り込もうと、高橋先生、自らがエジプトに取材旅行に行くほど力を込めたお話でした。

遊戯王文庫版2巻あとがきより抜粋
高橋先生自身も今読み返すと、ミステリーを飛び越えてシュールで難解であり、読者には伝わりづらかったかも知れないと振り返っています。

そしてシャーディーの回からいきなり人気は急降下し、打ち切りの話も出る始末、ボク自身が心の迷宮に迷い込んでしまったような焦燥感だっとと高橋先生は当時を振り返っていました。

出典: 原作/高橋和希 集英社「遊戯王」

確かに、それまでの学園編と比べると古代エジプトを題材にした難解な物語は、少年読者にはあまり響かなかったような気もします。しかし、連載1話目から千年パズルは登場しており、古代エジプトを題材にした重厚な物語が高橋先生の中で話の軸にあった事は間違いないでしょう。

出典: 原作/高橋和希 集英社「遊戯王」 第10話 牙を持つカード後編

そんな時、第9話・10話で描かれた「牙を持つカード」が当時のジャンプに掲載された週に、読者からの問い合わせが編集部に殺到したらしく異常な人気を得ていたのを思い出し、読者の要望に応えようとDEATH-T編でカードゲームを再登場させる運びとなったと語られています。

DEATH-T編は高橋先生が最も気に入っているエピソードだと語っており、シャーディーの登場で人気が低迷した後、再起をかけたDEATH-T編は
読者からの評判は予想通り好評で、打ち切りの危機を回避し、さらにはアニメ化の話も舞い込んでくるなど大成功を収めたのでした。

とある漫画化の証言

ここからの話はあくまで噂レベルの話で裏付けなどがしっかりしていない情報が多いのであくまで参考程度に聞いて下さい。漫画版 「遊戯王 打ち切り」 などで検索すると、とある漫画家の証言が多数HITします。それは「遊戯王」と同時期に週刊少年ジャンプ紙上で「幕張」という漫画を連載していた木多康昭先生の証言です。

幕張は遊戯王の連載開始より少し前、1996年11号から連載を開始し1997年49号(全9巻)で連載が終了しました。

木多先生は後年トークショーにて、「あの時、辞めていなければ、『幕張』の代わりに(ブレイク前の)『遊☆戯☆王』が終わっていた
と語ったいたらしいです。ちなみに幕張が終了する直前の掲載順位はこちら
71話15位
72話12位
73話15位
74話16位
75話14位
76話16位
77話17位
78話16位
79話16位
80話18位 (終)

平均15位前後と振るわない順位であることが伺えます。そして幕張が終了した時期の遊戯王の掲載順位を見てみましょう。

50話16位 千年の敵1 -謎の転校生-
51話09位 千年の敵2 -モンスター・ワールド-
52話09位 千年の敵3 -モンスター・ワールド-
53話15位 千年の敵4 -役割の人形-
54話17位 千年の敵5 -連続クリティカルを阻止せよ!- (幕張終了号)
55話19位 千年の敵6 -ゾーク城の罠-
56話16位 千年の敵7 -僕も闘う!-
57話16位 千年の敵8 -バトル!バトル!-
58話16位 千年の敵9 -白魔導士バクラ-
59話13位 千年の敵10-奇跡のダイス・ロール-

バクラ登場 R・P・G編

出典: 原作/高橋和希 集英社「遊戯王」第50話 謎の転校生

DEATH-T編が終了しまた学園話をはさんだのちに、新たに挑戦したのは新キャラ、バクラの登場から始まる第3章R・P・G編でした。確かに掲載順位を見てみると、平均15位前後を推移しており、打ち切りの候補にあげられてもおかしくないと言えるかもしれません。

しかし、DEATH-T編でアニメ化の話も出るなど、遊戯王の将来性に期待していた担当編集は、大好評だったマジック&ウィザーズを軸とした、カードバトル主体の物語で行こう!と高橋先生に伝え、高橋先生もそれに答える形で王国編を開始したのです。

結果的にはそれが大成功し、アニメ化、OCG発売など一台ブームを巻き起こしていきます。そして遊戯王の人気が爆発するきっかけとなった第四章、決闘者の王国編でも数々の逸話があります。

今回の記事はこのへんで、そして次回の記事では王国編で登場する数々の設定、キャラクターにあの大人気漫画「カイジ」の影響が強い事を考察していきたいと思います。

  • この記事を書いた人

メタポch

99年~シンクロ登場辺りまで遊戯王OCGをプレイ。10年以上の時を経て、初期の遊戯王の面白さを布教・記録するためyoutube・サイトなどで情報発信中。

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